20111229

<11月4日 弘前2日目~1>

1日目は張り切って歩きすぎたので体力のことも考えて2日目はレンタカーを手配。
三十路の旅とはそういうものだ。
朝イチから車に乗り込んで目指すは十和田市現代美術館。
でもその前に、昨日見られなかった市役所の中をちょっと拝見しようということに。
駐車場に車を停めて裏から入ったら、あれ、なんかふつうの市役所ですが・・・と少しとまどったんだけどメインエントランスはこじんまりとしながらもちゃんと前川事務所らしさ、ってのはあったのでした。
吹き抜けとそこを上っていく階段、2階には吹き抜けを囲むように回廊が。
ちゃんと普通の市役所として使われているので皆さんの邪魔にならないようにサラッと見て撤退。

各地の民芸好きとしては外すことができないのは弘前の「こぎん刺し」です。
ならばその本拠地を攻めるぞと、「こぎん研究所」というところに寄り道をしました。
実はその建物も前川建築で、前川さんのデビュー作ということでした。
建物は一部が「こぎん研究所」、一部が「小さい前川國男博物館」になっており、両方の意味で訪れなければならない場所だったのです。
ここがまた予想以上にすんばらしい空間で、入ってくる光がすごくキレイに見える、なんだろう、光を柔らかく受け止めてるんだよなぁ。うむぅ、勉強になるぅ。







前川さんのスケッチがいくつか展示されていて興味深く見ました。うぉ~、赤鉛筆バッテンだ~!私もくらったことあるわ~、とドキドキ。私が大学卒業後につとめた事務所のボスも厳しい人で、できの悪い私はしょっちゅう図面にバッテンをもらっておりました。とほほ。でも、そうやって育ててもらった。ありがたいことでした。
しかし、さすがの前川さんもフランス帰りのデビュー作なので、弘前の気候風土の中で雨漏りや凍害にかなり苦労したらしく、建築当初にあった玄関の庇は凍害のために壊れて撤去されてしまったようです。誰だって失敗はあるのだ!


こ、これ、すごく欲しい!どこかに売ってないのかなぁ。


床のモザイクタイル、このまま持って帰りたい。

こっちの床も、このまま持って帰ろう。うん。


というかんじでかなり堪能してしまったうえに「こぎん研究所」で家族のお土産と自分のお土産を吟味に吟味を重ねて選んだりしていたら予定していた以上に時間がかかってしまったのですが、こういう予定外のことも旅の醍醐味でしょう、と開き直って、やっと弘前を出発したのでした。


<11月3日 弘前1日目~5>

おやつを食べておなかが落ち着いたので元気に歩き出す。
藤田記念公園から少し歩いたところにこちらも前川國男設計の弘前市役所。
でも祝日でお休みだったので外からぐるっと見て「ほほう」とか「ふむふむ」とか分かったふうにうなずきながら怪しく窓を覗いたりしておりました。つかまるぜ。



深い庇と煉瓦タイルの使い方が素敵。こうやって古くなってもかっこいい建物って新しく建っている最近の建物でもありうるだろうか。少しでもそういう建物が増えるように小さい力でも少しずつ心がけていきたいものだ。。と思う。


秋冬の旅行はどうしても日没との戦いという側面を含んでいる。午後4時すぎにもなるとだんだん空が暗くなり、足取りもあわただしくなる。
弘前の観光案内には必ずでてくる旧弘前市立図書館。
ここは見ておかないと駄目でしょう、と閉館ギリギリに滑り込み。

平面プランは印象よりもずっとシンプルで、あれ、こんなもんかな?という印象も。建物の大きさのわりに部屋割が細かくてそれぞれの部屋がこじんまりしていたからだと思う。
でも、使われている素材はしっかりしていていいな~と思った。


こういう古い建物をみて歩くのが好きで、いろいろと見ていると、床の板張りに使われている木に注目してしまう。今ふつうに建てられている建物の床は、木のフローリングといってもだいたいは合板の表面に薄く削った木が接着されているものがほとんど。無垢の木を使ったフローリングは好きな人がわざわざ選ぶ物であって単価も高いしメンテナンスはかかるし隙間があいてくるし割れることもあるし、とその良さの反面、リスク前提で選ぶものとされている。
残念だな~と思うのは、そういう風にリスクを分かっていて選ばれている無垢のフローリングも施工のときに下地に接着貼りされてしまうところ。「あばれる」「そる」「すく」なんていうデメリットとされていることを、接着&釘打ちで押さえ込んでいるんだよね。接着してしまうと将来的にたとえば住み替えや建替えがあってもキレイに解体できないから、次の住まいに再利用するのが難しい。
いい色に焼けて、住み手の歴史がしみこんで味わいの増した床板を、また次の住まいでも床に使ってあげたら、それはとても素敵なことなのに。

だから私がもし無垢のフローリングを選ぶことになったら、厚い材料を接着材は使わずに釘だけで貼るのだ。ただの板でもいいよ。傷ついても汚れてもいいよ。あばれても割れてもいいよ。そうやって一緒に年をとっていきたいと思う。


そのとなりにある旧東奥義塾外人教師館。
こういう建物がちゃんと中に入って見学できるっていうのが弘前のいいところです。
しかも無料。
だいたい古い街に行っても、中までは公開してなかったり、入場料が必要だったりが多いもんな。
それは弘前市が偉いんだろう。民間にまかせると、そうはいかないし、見せ方ももっとけばけばしく観光客に媚びた雰囲気になると思う。ゆるキャラとか・・・。
どうかこの路線のままでいてほしい。

ここをでると外は真っ暗。
充実の街歩きはいちおう終了。

でも街歩き途中のポスターで「JAZZライブwith津軽三味線」というのを見つけて、
場所を調べると近くだったので、急遽それを見に行くことに。
旅先でフラリとJAZZライブに行く。どこのオシャレ夫婦か!

でもでも期待の津軽三味線が入ったJAZZはちょっと拍子抜け。
一曲だけのゲスト演奏で、津軽三味線用のオリジナル曲なんだけど、
ピアノもウッドベースもサックスもドラムも大御所津軽三味線に遠慮したりされたり、ってかんじ。
もっと両者じゃんじゃかやってほしかった・・・。

うれしかったのはサックスの人がすご~く重厚で素敵な演奏だったことと、
ボーカルの若い女の子が予想以上に声が良くて上手だったこと。

どこにだって収穫すべきものはあるのだ。

JAZZライブ終了後、その近くのフレンチビストロ(ル・コショネ)でワイン飲んでちょこちょこお料理頼んで本日の締めくくり。あー充実だ。

弘前という街は一日歩いてこれだけ回れるっていうのがすばらしい。
(万歩計は22000歩だけど!)
弘前公園を中心にして見所がギュッと集まっているので歩いて回るにはちょうどいいし、
街の層が厚い。
観光地なのに、ごちゃごちゃとおみやげ屋さんがならぶこともなく、地元の人の日常の中におじゃましているかんじ。ああ、小樽にも見習ってほしい。。

さー、明日は十和田市現代美術館だ~!





20111228



<11月3日 弘前1日目~4>

お腹がすくと機嫌が悪くなるのは誰だってそうだって思う。
だけど私の場合はそのなかでもほんのちょっとだけ酷いと思う。

お昼を食べずに歩きまわって午後3時をすぎ、さすがにお腹がすいたぞ、脚も疲れたし、と訴えるも、ダンナさんはまだウキウキと写真を撮って廻っているので、う~~、とテンション下がってしまう。そういうとき私の目は生きる光を無くし、焦点がうつろになり、見えない尻尾はダランと下がり、頭からは魂が半分くらい抜け出ているわけだけど、次に訪れるところには喫茶室があるのだ!

最後の力を振り絞って(といっても横断歩道を一つ渡るだけ)たどり着いたのは藤田記念公園。
お金持ちの藤田さんのおうちとお庭が公開されていて、おうちの方は喫茶室としても開放されているのです。
ホットケーキがあれば最高!と思っていたけどホットケーキはなく。
でもチーズとハムを挟んだシンプルなクロックムッシュと温かい紅茶をいただいてエネルギータンクはレッドゾーンを脱したのでした。ふー。

で、ここでも、「ここに住みたい」を連発。
冬はけっこう寒いはずだけど、この日は終わりかけの紅葉がいい感じ。
きれいに保存されている建物で大変気持ちいい空間だった。
床のタイルに注目だ!






20111227

<11月3日 弘前1日目~3>


前川 國男さんの設計した建物は弘前市内にたくさんあるのだけど
そのなかでもびっくりしたのが弘前公園内にある弘前市民会館だった。
あまり前情報を入れないでおいたのも良かったのかもしれない。
昭和の良い時代に、時間とお金をかけて、手で考えて作られた建物という雰囲気が充満していた。
大きな建物だけどスケール感はあくまでもヒューマンスケール。
どこかヨーロッパのモダン建築を見に来ているような錯覚にとらわれた。
(それは前川さんがコルビジェさんの弟子だから、というのも大きいと思う)
こんな近くにこんなに素敵な建物があったなんて!と
二人してキョロキョロウロウロ。


ちょうど中学校の合唱発表会が行われていて、父兄のふりして大ホールにも潜入できたし。
中学生の合唱も良かった。
「夢の世界を」
あ、これ私も歌ったわと一緒に口ずさんでみたら、まだ歌えたことにもビックリ。


は~。また行きたいな。
建築好きのみなさん、ここ、おすすめですよ。

あとはそれぞれの写真をご覧ください。














後半4枚の写真は市民会館の管理棟の写真。
大ホール棟と管理棟がエントランスのピロティ兼2階テラスによって繋がっているという構成なのです。その管理棟も味わいがあって、まんなかの大きな吹抜けをスキップフロアが囲んでいるところ、吹抜け以外は低く抑えられた天井高、かわいらしい家具、色遣いのセンス、前川事務所が手掛けたモダン建築のエッセンスがギュッと詰まった空間でした。

「ここに住みたい!」「あの椅子、もって帰りたい!」と小声で叫びながら、グルグルと歩きまわったり椅子に座ったり。ここに来る前に不覚にもカメラの電池が切れてしまったので、ダンナさんに「ここ撮って」「あれも撮って」と注文もうるさいのだけど、時間は午後3時すぎ。なんとなくお昼ご飯を取らずに歩きまわっていたので、そろそろ私の電池も切れる頃。
「おなかすいた~~」と不機嫌になるまでのカウントダウンも始まっていたのだった!!